第18回 キャリア・コロッキアム 開催報告
2022/12/6 開催 第18回 キャリア・コロッキアム
「持続可能なキャリア~不確実性の時代を生き抜くヒント」
開催レポート【詳細版:長文です!】
100年人生に向かう「多様なキャリア」と「キャリア支援のあるべき姿」について勉強し研鑽する場として、当NPO法人が開催する「キャリア・コロッキアム」。
第18回は、2022年12月6日(火)19:00~21:00、Zoomによる遠隔セミナーを開催いたしました。NPO会員8名、非会員9名の計17名が参集しました。
第一部は、「持続可能なキャリア~不確実性の時代を生き抜くヒント」という演題で、大手前大学 現代社会学部教授であり、組織行動・キャリアを研究テーマとする北村雅昭先生様の講演が行われました。
「持続可能なキャリア」とは、組織内キャリアとニューキャリアが対峙する中で、停滞感のあったキャリア研究に新たな活力を生む新たなパラダイムと言えます。
この「持続可能なキャリア」を考える今日的な意義として、「人生100年時代、グローバル化、情報化によりキャリア環境が大きく変化」をはじめとして4つの項目が挙げられました。
前提となるキャリア研究におけるパラダイムとしては4つのステージがあり、これらは第1ステージが「個人と組織と職業を別々にとらえ、そのマッチングを考えるマッチング・アプローチ」、第2ステージが「個人と組織のダイナミックな相互作用によるキャリア発達を考える組織内キャリア・パラダイム(キャリアの管理主体は組織)」、第3ステージが「組織協会を超えるキャリアや個人の心理的成功に注目するニューキャリア・パラダイム(キャリアの管理主体は個人)」、第4ステージが「持続可能なキャリア・パラダイム(キャリアの管理主体は個人と組織(共同責任))」となっており、持続可能なキャリアはこの第4ステージに該当するものとなっています。
北村先生は「持続可能なキャリア」はこれまでのキャリア論を統合し、発展させるものとした上で、その上でバックグラウンドとなる理論として以下4つの紹介がされました。
(1)資源保存理論
人は心の中に資源のプールを持ち、そこにストレス対処で必要な資源が保持されていればストレスに対応しやすくなる。資源は、人に関わる物、個人的特徴、境遇、エネルギーと幅広く定義されているのが特徴的な考え方。これらは単独で作用するのではなく、一体となって効果を発揮する。
(2)自己決定理論
内発的動機づけ理論を発展させたモチベーションに関わる理論。人は、「自律性」「有能性」「関係性」という3つの本来的な欲求を持ち、自発的に能力を発揮するためには支援的な環境が必要である。
(3)補償を伴う選択最適化理論
高齢期の適応は、特定の目標に絞り(選択)、機能低下を補うために他者の支援や何らかの手段や方法を獲得し(補償)、その狭い領域や特定の目標に最適の適応を果す(最適化)という、選択、補償、最適化を通じたメカニズムで達成される。
(4)社会情動的選択理論
ひとの目標やモチベーションは、年齢そのものではなく、時間的展望の変化により決定される。若者のように、自分に残された時間が限りなくあると認識すると、将来の自分を築くための目標、すなわち、新たな知識獲得や知識獲得につながる人間関係が重視される。高齢者のように、自分に残された時間や将来は限りがあると認識すると、新たな知識獲得の重要性は低下し、安心感、幸福感といった情動的な満足をえる人間関係が重視される。
最後に、北村先生の最近の関心事項として、「キャリアショック研究」と「50代以降のキャリアの持続可能性」の話が紹介されました。
講演後の第二部では、諏訪理事長から、「持続可能なキャリア」というものに関して、どうしたら実現できるのかという問題提起がなされました。関連する様々な項目に関するデータ(属性別の自己啓発を行った者割合など)をご説明いただいた上で、4グループに分かれて意見交換をしました。
諏訪理事長の話を受けた後、4グループに分かれグループワークに移りました。すべてのグループから、代表者が意見を集約して、発表が行われました。
参加された皆さんからは「キャリアと聞くと昔のように課長部長といった大きなイメージを抱きがちだが、ちょっとした気づきをあげるというのも持続可能なキャリアの実現にはとても重要だと思う」「自分が中堅の頃に会社から勧められて学んだスキルを活かして社内で仕事をして、今はそのスキルで独立している」など、様々な意見が出されました。
この勉強会は年間4回の開催を予定し、毎回、多様なキャリアにかかわっているゲスト講師をお招きし、基調講演をしていただいたうえで、参加者の皆様と一緒にグループワークを行っていきます。
次回(今年度第4回)もZoomによる遠隔セミナーで、2023年3月14日19時から開催の予定です。Z世代のキャリア観をめぐる基調報告を齊藤弘通先生(産業能率大学経営学部教授)がなされます。多くの皆様のご参加をお待ち申し上げています。