開催報告 第19回キャリア・コロッキアム

100年人生に向かう「多様なキャリア」と「キャリア支援のあるべき姿」について勉強し研鑽する場として、当NPO法人が開催する「キャリア・コロッキアム」。

第19回は、2023年3月14日(火)19:00~21:00、Zoomによる遠隔セミナーを開催いたしました。NPO会員9名、非会員26名の計35名が参集しました。

第一部は、「Z世代の仕事観・キャリア観」という演題で、産業能率大学経営学部教授であり、人材育成論、継続教育論、質的調査法を専門とする齊藤弘通先生の講演が行われました。

齊藤先生は学部ゼミで企業と共同研究していて、そのテーマは「Z世代のライフスタイル」となっています。すでに6,7年研究をしており、発端は「自分たち世代を自分たちで調べてみたら面白いのでは」という思いからでした。そんな中、以下4つのテーマで話がなされました。

「1.Z世代の主な特徴」

Z世代とは2012年くらいまでに生まれた人。世界共通の定義で、2022年時点で25歳くらい。主な特徴を列挙すると以下のとおり。経済的安定を求める傾向がある。社会貢献、多様性、持続可能性に高い関心がある。Y世代ほどではないが、起業への関心がある。実生活でも SNS でもシームレスに 他者と繋がっている(ソーシャル・ネイティブ)。複数のアカウントを使い分けながら、オンライン上の存在を注意深く整理し、キュレーションしている。正解より納得解を求める。タイムパフォーマンス(タイパ)を重視する。固定的なコミュニティにおける友人関係よりも、好きなことや趣味で繋がっている友人関係を重視する。情報に透明性やプロセスを求める。現在の生活を充実させ、楽しみたい。

中でも「Z世代を理解するキーワード」として挙げられたのが、「チル&ミー」という言葉で、社会よりも自分という意識が強いということでした。

「2.Z 世代の仕事観・キャリア観をめぐる各種既存アンケート調査の結果から見えること」

①働く上で大切にしたいこと →貢献、成長、やりがい、仲間など(競争が最下位)

②働く上で企業に求めること →安定性、成長性、福利厚生、社会貢献など

③働きたい職場の特徴 →人間関係・雰囲気の良さ・アットホーム、個性の尊重など

④上司に期待すること →フィードバック、意見を傾聴、ワークライフバランス配慮など

⑤働き方に関すること →副業制度への関心が高い(貯蓄が主な理由)、テレワークなど

⑥評価基準に関すること →仕事量よりも質、実力・成果で評価して欲しい

⑦将来のキャリア形成に関すること →「出世」よりも「安定」を望む割合が高い

「3.Z 世代の現役大学生に対するインタビュー調査の結果から見えること」

自己成長のためにフィードバックして欲しい、自分に対する客観的な意見が欲しい。個性を重視したい、個性を重視して欲しい。プライベートの時間を重視したいので、仕事とプライベートはメリハリを付けたい。自分よりも下の年齢の子が活躍しているのを見ると自己肯定感が下がっている気がする。

「4.Z 世代に対するキャリア形成支援のあり方、人材育成のあり方についての提言」

キャリア初期からの自己成長機会(ストレッチした仕事課題等)を提供する。専門知識・スキルを高められる職場環境や教育環境を提供する。Z世代社員の特技や好きなことなどに興味関心を示し、活用機会を付与する。仕事の成果や人事評価における丁寧なフィードバックや対話の機会を付与する。役職者はワークライフバランス(仕事とプライベートのメリハリ)を重視した職場環境の構築に配慮する。

以上のように、膨大なデータをもとにしたZ世代の特徴と、そのキャリア形成支援について話がなされました。

 講演後の第二部では、諏訪理事長から、「皆さんはZ世代社員のキャリア形成や育成をどう考えますか?」という問題提起がなされました。関連する様々な項目に関するデータ(キャリア自律と市場価値など)をご説明いただいた上で、6グループに分かれて意見交換をしました。

すべてのグループから、代表者が意見を集約して、発表が行われました。参加された皆さんからは「Z世代はマイナスの出来事が多いため、±0でいいよねという思考になっていくのは納得感がある」「小さい目標を決めて、チームでたくさんフォローするなどして、夢を持てるような人材育成ができるようになればいいのでは」など、様々な意見が出されました。

この勉強会は年間4回の開催を予定し、毎回、多様なキャリアにかかわっているゲスト講師をお招きし、基調講演をしていただいたうえで、参加者の皆様と一緒にグループワークを行っていきます。

次回もZoomによる遠隔セミナーで、2023年6月22日(木曜)19時から[ジョブ・クラフティングをめぐって]開催の予定です。多くの皆様のご参加をお待ち申し上げています。