開催報告 2022年度 総合シンポジウム
2月1日に総合シンポジウム「副業・兼業によるキャリア形成」がオンラインで開催されました。
参加者95名と大変盛況で、兼業・副業への関心の高さを感じました。
以下開催報告です(文責は事務局)。
基調報告:石山恒貴先生(法政大学大学院教授)
パネラー:加藤健太様(株式会社エンファクトリー社長)
佐々木梨華様(一般社団法人RCF[本業]、株式会社machimori[複業])
中村龍太様(複業家[コラボワークス、サイボウズ、自営農業])
代表質問:菊池桃子理事
まず、石山先生より「副業・兼業によるキャリア形成 —その課題と展望」というテーマで基調報告がありました。
・厚労省のモデル就業規則の副業・兼業についての書きぶりが肯定的なものに変更されました(2018年)。
・企業においても「副業・兼業」容認派が増えてきたが、2021年時点でも全面禁止の企業が45%です。禁止の理由は「長時間労働を助長」「労働時間の管理把握が困難」等があげられています。逆に副業実施企業が挙げる副業の効果は「従業員のモチベーション向上」等です。
・社員の副業を推奨している企業、副業人材の受入れ企業・自治体の活性化事例の紹介が多数紹介されました。
・まとめとして、副業・兼業に対する企業の姿勢は様々だが、副業・兼業を行うことは「従業員が本来有している権利であり、就業時間外の自由な選択である」とするのが最もバランスの取れた姿勢と石山先生は指摘されました。これは「キャリア権」にも通ずる考え方との説明もありました。
・代表質問として菊池理事から、学生は就職してしばらくは本業に習熟してからとか案ずる声もあるとして、兼業副業をはじめる「適齢期」について質問があり、石山先生からは、学生時代からでも、ミドルになってからでも、本人のやりたいときにいつでも構わないと考えたいと回答されました。
以上に引き続き、パネラーより副業に関する実体験に基づく報告が行われました。
・エンファクトリー社長 加藤様:専門家マッチング事業、人材・組織開発支援事業(企業を跨ぐ越境学習プログラム)等を通じて、個人の「キャリア自律」とともに「外部人材活用」や「社員の越境体験」を通じた企業の活性化の後押しをしていることを発言されました。
・一般社団法人RCF/株式会社machimori 佐々木様:岩手県久慈市出身。復興支援事業を行うRCFで働きつつ、熱海の街づくりの会社machimoriの複業人材募集に応じ、企業研修の営業をしています。これまでの経験を活かして他組織に貢献できる喜びを感じられたそうです。副業経験による発想の転換、本業への応用を説かれました。
・複業家 中村様:サイボウズで働きながら、フリーランス、自営農業に従事。自分が複業に求めるものは「安心感」「貢献感」「展望感」を通じて「幸福」を感じられるとのこと。幸福につながる「報酬」は金銭のみならず、人間としての能力、人的ネットワークなども含まれると言われました。そう考えると一つの会社ではすべての報酬は期待できないと指摘されました。
・その後、基調講演を行った石山先生とパネラーとのディスカッションでの主な議論は次の通りです。チャット機能を用いて、視聴者から出た質問に応じていました。
Q:副業のハードルが高いと感じている人に言うとすれば・・・
・「複業」によって「ありがとう」の歯車を回すことができます(中村)
・私の場合はmachimoriのブログに「いいね」を押したら向こうから誘いが来ました。受け入れ側も敷居を低くしてくれるケースがあるので、とりあえず発信すると拾ってくれる人がいます(佐々木)
Q:副業をやっていて困った面は・・・
・当社は「専業禁止」を謳っているが、複数の仕事に時間を忘れて入り込んでしまうことがあります。副業の方で忙しくなった社員の奥さん(副業していることを奥さんに伝えてなかった)から「(本業で)何でこんなに遅くまで働かせるのか」とクレーム電話があり、困ったことがあります(加藤)。
・やはり働きすぎの問題があります。特に自分の場合どちらの組織も繁忙期が重なるので(佐々木)。