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《リレーエッセイ12》

「日本的雇用システムとキャリア権」

中央職業能力開発協会 常務理事 山田 亮


 私は1980年に旧労働省(現:厚生労働省)に入省し、5年前まで雇用政策やその周辺で職業人生を送ってきた。「雇用の安定」というものに大きな価値を感じる世界に長く身をおいてきたせいか、これまで日本の「雇用の安定」に間違いなく寄与してきた「日本的雇用システム」には肩入れしたい気持ちが強い。そういう前提で聞いてほしい。

最近、日本を代表する経営者から日本的雇用の将来を危ぶむ発言が相次いでいる。しかしこの種の議論は時代・背景は違え、ずいぶん昔から、それこそ私が労働省に入省する頃から繰り返されてきた。

では40年近くを経てどうか。確かに非正規雇用は大幅に増えた。しかし厚労省の白書によれば、現在50代の男性でも約半分は最初の仕事から離職していない。正規雇用について統計を追えるここ4半世紀でみて、転職率に上昇傾向はみられない。最近の若者の継続就業率はむしろ高まっている。
繰り返される異論にも関わらず、いまだに長期雇用層が大きな塊として存在し続けているのは何故だろう。たぶんそれは労働者のみならず、企業自身が様々な問題を抱えながらも日本のメンバーシップ型雇用に捨てがたい価値を見出しているからだと思う。

「『キャリア権』というのは結局、いつ自分がクビになるかわからない流動的な労働市場において必要となり、広がっていく権利ではないか。」
そう言われることがある。しかし、私は今後も長期雇用層は大きな塊として残るだろうと思っている。すると、その場合の「キャリア権」の意義とは何だろう。

長期雇用層は依然多いとはいえ昔のようなスピード昇進・昇給は難しい。片や人口減少社会の企業には「人材の確保・定着をどう図るか」という課題がのしかかっている。社員のモチベーションをどう上げるかは大きな課題だ。 「キャリアデザイン? 人事は会社が問答無用で決めちゃうんだから、やっても意味ないよ。」
われわれが「企業内キャリアコンサルティング」を広めようとする時によく耳にする言葉だ。人事異動について、本人の意のままにはならずとも、自らのキャリア形成上の希望を会社に伝え、会社も社員の希望を受け止め、逆に社員の現在の仕事をどう位置づけ、何を期待しているのかを伝える、要はもっと上司や人事とのコミュニケーションが活発になれば、社員も自身のキャリアを考えることへの「手ごたえ感」、会社の人事への「納得感」とともに、今よりモチベーションを上げることができるのではないか。そのようなコミュニケーションが会社の中で確保されること、「キャリア権」にそういう意味も込められると私のような経歴の者にはしっくりくる。(以上、あくまでも個人的な見解です)。



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