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《リレーエッセイ11》

「職業紹介とキャリアコンサルティング」

認定NPO法人 キャリア権推進ネットワーク会員・総務部次長 上市貞満


私は、現在、公益社団法人 全国民営職業紹介事業協会で働いていますが、先般、有料職業紹介事業の経営者Aさんとお話する機会がありました。

Aさんのお話は、職業紹介事業の運営だけでなく、キャリアコンサルティングのあり方についても示唆に富んだ内容で、とても考えさせられるものでした。それは次のような内容です。

「職業紹介において、求職者の希望を聞くことが大事という雰囲気がありますが、職業紹介の定義には、求職者の希望を聞くということは書かれていません。求職者に対してはその能力に適合する職業を紹介し、求人者に対してはその求める要件に合う人を紹介すると定義されています。職業紹介の業界全体として、求職者のもつ専門性やスキル、求人者の事業戦略やそれに必要とされるスキルを理解した上で、紹介する能力をさらに高めていくことに取り組むべきではないでしょうか。

また、キャリアコンサルタントの中には自己実現を前面に出す人がいますが、職業紹介事業においては望まない結果に終わることが多いです。有料職業紹介事業は、求人者から紹介手数料をいただいて成り立つビジネスであり、会社や組織の発展に貢献することによって、本人のキャリアもアップするのであって、本人のキャリアが最初にくるのはどうかと思います。若年者や定年退職者などにおいては、自己実現や夢のためというのはあり得ますが、一般の転職者の場合は、組織に必要な人材としてキャリアをどう構築していくべきかが重要だと思います。」


◆キャリアコンサルティングはリテンションに役立つ
上記は、一経営者のご意見で、有料職業紹介事業者を代表するものではありませんが、キャリアコンサルティングやキャリア権の概念をもっと普及させていくためには、このようなご意見もあることを受け止め、求人者や企業、組織に対して、キャリアコンサルティング等のメリットをもっと分かりやすくアピールしていくことが大切のように思います。

人手不足が深刻になる中、企業は採用とともに人材の引き留め(リテンション)を重視する傾向が高まっています。JILPTの下村英雄主任研究員は、企業内キャリアコンサルティングの役割や機能の一つとして、リテンション機能があることを明らかにしました(https://www.jil.go.jp/press/documents/20150618a.pdf)。研究によると、当初は「転職も視野に入れて今後の人生やキャリアを考えたい」として企業内キャリアコンサルタントを訪れながら、最終的に「今の仕事を続けながら、自分が望む職場を探すことになった」とする事例が多くあったそうです。キャリアコンサルティングに対する企業側の理解を深めるのに、こうした研究成果なども活用してはいかがでしょうか。


※プロフィール
1981年労働省に入省。おもに職業安定行政に従事。現在は民紹協専務理事。
1級キャリアコンサルティング技能士

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